【コラム】mother tongueとグローバルネットワーク

mother tongue、文字通り母親の舌、日本語に訳すと「母国語」だ。
ところが、母国語とmother tongueでは意味しているところが微妙に違う。
例えば、父親がアメリカ人で母親が中国から来た留学生だったとしよう。産まれたのも育ったのもアメリカ。すると、英語が母国語になるわけですが、 mother tongueは中国語になるわけです。国籍はアメリカと中国の二重国籍になるから、中国語も母国語じゃんという言い方もありますが、mother tongueとは文字通り育ての母親の主な言語になるわけです。
もし、母親が天安門事件で中国から逃げてきた人でもやっぱりmother tongueは中国語になるわけです。

さて、昨日の話は少しとっちらかっていましたが、要するにこれからはグローバルに独占市場を創ったものが勝つわけです。そのためには中国は無視できない存在です。

また、我々の研究の世界にしろ、ビジネスの世界にしろ、一番大事なのは人と人のネットワークです。

アメリカのトップで働くビジネスマンが子供に中国語を習わせるのは言葉が通じないことにはネットワークができないからであり、逆に中国語が話せれば奥深いところまでネットワークを広げられるからです。また、中国語をしゃべれる中堅のビジネスマンと、話せない大手のビジネスマンではパイが劇的に違わない限り中堅の方を取るでしょうし、もし、同規模のビジネスパートナーがいたらどうこうことになるかは自明です。

要するに、これからのグローバルビジネスに中国語は必須であるにもかかわらず、日本ではほとんど個人任せ。英語よりも先に中国語を勉強する人なんてほとんどいません。

今の日本に不足しているのは、日本人のマインド、企業精神を骨の奥底で理解していつつも中国語をしゃべれ、かつ中国に対して嫌な感情を抱いていない企業戦士です。そんなものだから賄賂を渡したり、また、無駄な労使交渉でもつれたりするわけです。

ところがです。実はそんな人材が日本にはそこそこいるんですよ。

それが農村に嫁入りしている中国人の子供です。ほとんど人身売買に近い形で日本に送られるような印象を受けるため眉をひそめる人もいますが、中国の田舎暮らしに比べたら日本での暮らしは天国のようなものと期待して来ている娘も実際いるので一概に悪いものとも決めつけられません。ほとんどの家庭は優しく迎えているはずですが、やはり異国で子作りだけを期待されて孤立する寂しさは耐え難いものというにも事実です。

で、話は最初に戻るわけです。そんな彼女たちは一応日本語を勉強してから日本に来るわけですが、やはりそれは付け焼き刃。片言日本語でしか無く、メインの言葉は中国語なわけです。環境がその児に日本語を教えるでしょうが、やはり一番大事なのは母親の言葉を理解することです。日本で育っていながら中国語もそれなりに理解できるように育っていくはずなのです。もちろん、長男は農村を継ぐことを期待されて育てられるでしょうが、次男や女の子はそれのサポート的にしか扱われないはずです。

そういう子達にとって、実はビックチャンスが来ているわけです。ところが、やはり田舎育ち。自分にそんなポテンシャルがあることを知らずに1次産業やパートに身を投じている場合があるのではないでしょうか。

ここは積極的に企業がピックアップして、ちゃんとした学歴をつけて持ち上げてあげるべきでしょう。ただでさえ、学校でいじめられたりしてアイデンティティーを見失いかけている可能性が高いのですから。