尾崎里紗 17歳

尾崎里紗さんは、日本のジュニアテニスにおいて単複優勝するほどの日本のホープで現在、より強くなるため世界中を転戦しています。

次にいつ彼女を見られるかどうかわかりませんが、将来彼女の成長ぶりを感じ取るために今の印象をまとめておきます。


高々3つのシングルスにダブルス一つですし、どんな練習をしているかも知りませんから、色々と勘違いはあるのでしょうが、私の目というフィルターを通した印象ということをご了承ください。


実は私が彼女を初めて見たのは2年前のUS OPENでした。
小さくて線の細い子だなというのが、そのときの印象でした。
球の力もそこまで強くなく、リードするシーンもあったのですが、粘り負けしていました。


そして、今年です。毎日行くことにしたからこそ彼女の試合を全部見ることが出来ました。


最初の試合を見たとき、まず、見た目で2年前と全く違っていました。身長はそこまで伸びていませんでしたが、全身の筋肉の質が大幅に増加しているのがわかります。


そして、眼です。


眼とプレイスタイルに魅せられてしまいました。


分かり易く例えると、マンガ版のナウシカの眼です。


心の中では迷いと葛藤でゆらゆらと弱気と強気が行ったり来たりしていながら、やると決めたことを貫こうとする強い意志を伴い、目の前のボールに集中し、自分の全力を出そうとする。


そう、腐海と人間界の狭間で悩みながら、村の人を守るという目的のために、悲しみと同時に本能的な戦士としての喜びを同時に抱えつつ目の前の難関に命がけで戦うというナウシカの眼なんです。


えっ、ちょっと待って、テニスプレイヤーってみんなそうなんちゃうの?と思うかもしれませんが、ちょっと違うんです。
受けと攻め、迷いと決意のバランス、諦めない強い意志、でも、精神的に負けちゃって落ちちゃうときもある、それでも、腐ることはないという心の持ちようですね。このバランスがナウシカなんです。



ナウシカに似ているからというより、共感を呼ぶ精神性というか、守りと攻めのバランスが絶妙だったのです。
もちろん、達観してほとんど弱気にならないプレイヤーも存在しているし、そういう人は自分の力をほぼ100%出し切れたりするんですが、観てて美しいテニスではあっても、普通の人が共感するテニスではないわけです。


また、自分のプレイが出来なくて、ラケットをたたきつけたり、半分諦めて守りを捨ててしまったり、逆に勝ちすぎて守りをおろそかにしてしまうプレイヤーは結構たくさんいるんです。


傍目に彼女がそれが出来ているように見えたのは、そういうテニスをコーチングの元目指しているからのようですし、実際、ずっと見てきているコーチにとってはまだまだのところも多々あるんでしょう。しかし、そういう両方の気持ちを持ちながら、気持ちのぶれを抑えようという意志は感じ取れるわけです。


それが上手くいくときもあれば、行かないときもあって、場合によっては、押し込まれて、ずるずる行くときもあるでしょう。
でも、そこは技術の問題だと思うんですよ。



はっきり言って、彼女より速い球を撃てる選手はごろごろいます。でも、それはある意味、攻めすぎているポジションなので、球足は少し短いですし、あのレベルだと打点に入っているなら球のスピードは怖くありません。



彼女はフォアもバックも守りのベースラインがしっかりしていて、ただし、ショットが短くなることがあるためそこをつけ込まれて押し込まれているだけなんです。ということは、そこの球足を長くできる技術さえ身につければ、相手にとってはかなり脅威です。



背が低くて、守備範囲がどうしても小さくなりますから、逆クロスでワイドに攻めるというより、普通にクロスを深く左右に撃っていき、短くなったときにフォアのストレートを強打するという今のスタイルは非常にマッチしていると思います。


また、彼女のもう一つの売りは、ドライブボレーです。


普通、ドライブボレーって、気持ちが攻めすぎるとネットするし、びびるとアウトします。最悪の選択肢ですが、一回落として叩きたいという誘惑にも駆られるし、前にポトンとボレーで落とすことも頭をよぎります。


彼女の場合、撃ち込むこと一択。あの迷いのなさは完成された一つの武器でしょう。



今後の課題は押し込まれそうになったとき、その一歩手前で相手に一歩引かせるプレイスメントのショットを撃てるようになるかです。



実際、シングルスは三つとも尻上がりだったのです、つまり、それぞれ対応できているわけです。
ジョコビッチナダルに対して、最初の3ゲームでこれが出来ていました。せめて1セットの終盤までに自分のスタイルを取り戻せるくらいにゲーム展開を持っていけるようになることを期待したいと思います。



しかし、彼女のやれることをひたすらやり通そうとする、泥臭く勝利にこだわる姿をみて、結構自分の中で大きな変化が起きました。



以前、ビジネスとアカデミアの共通点を指摘しましたが、あぁ、スポーツも同じなのねと気づかされました。



やりたいこと、得たいものがあるなら、自分の長所を最大限に活かして、それが最大限活かせるステージ上で、泥臭くやり続け、攻め続けること。苦しいことも、守りのときもあるけれど、腐らず、ブロックし続けて、ここぞというときは一気に攻めること。言葉にすると普通のことのように思えるけど、この心のバランスの持ちようが一番のポイント。



で、ちょっと勝ち急ぎすぎていたなと反省すると共に、キャリアプランを変更。幸い、そういうポジションが空いていたので、踏ん張ることが出来ました。



17歳の女の子に人生を教えられることになるとは思いも寄りませんでした。


これからはシニアのステージにも上がるらしいので、テニスの大会を見る機会がありましたら、是非、尾崎里紗さんの試合を見てあげてください。