【コラム】手っ取り早く日本の科学のレベルを上げる方法

ふと思い立ったので、簡単に書いておくです。

手っ取り早く日本の科学のレベルを上げる方法がありました。
日本のほとんどの研究室は、教授、准教授、助教、助手など国の税金で養われており、ボーナスも貰えて、クビに絶対ならない公務員が3,4人勤めています。その人件費は後々の社会保障費も含めるとざっと2000-3000万くらいでしょうか。
それだけの公務員を雇っていながら、研究の方針を決めるのは教授一人なんです。
ほとんどの准教授や助教は教授のテーマに乗っ取って、実験をやり、指導していますが、そのほとんどの時間は雑用で忙殺されているのが現状です。

一方、アメリカではどんなに大きいラボでもそんな中間管理職みたいなパーマネントの職はありません。パーマネント的にシニアポスドクやテクニシャンが10年以上勤めていることはありますが、その立場はポスドクであり、テクニシャンでありますからいつでもクビを切ることが出来ます。

つまり、公務員としてパーマネント(しかも実際はテニュアトラックでパーマネントですらない、テニュアを取るとパーマネントになるがそれなりに業績は出さないといけない)に税金で雇われているのはラボに一人だけであり、その人が基本的にほぼ全ての決定権を持っています。日本は決定権を持っている人の傘下に3,4人の決定権を持っていない人がいるわけです。トップの人の判断が間違っていたらその残りの3,4人の行き先も間違った方向に行くシステムです。一方、アメリカはそのリスクは一人だけが負います。

日本の研究費はアメリカの1/3くらいとしたら、決定権を持っていない上にクビになるリスクを抱えていない、つまり、競争原理の働かない環境に置かれている人が2/3以上いるわけです。何が当たるかわからない科学の世界において、かける金額が1/3、決定権の分散度で1/3と大雑把に言って1/9の規模でしか投資出来ていないわけです。

総額では敵いませんので、どうしようもありません。しかし、システムの変更で3倍効率化出来るのが助教や准教授の独立職化です。機器の共用化を義務づければ、研究室の規模を全体的に大きくする必要はありません。

教授の人は、長いスパンの研究をする人がいなくなるから研究のレベルが下がるとか、技術の継承が途切れるとか言いますが、そんなものはポスドクやテクニシャン、もしくは上の学年の学生のサブワークとして複数ライン走らせておけば、途切れることもありません。要は私はラボの運営、人の運用が下手なんですと言っているも同然です。そういう人が集まらないという言い訳も同じことでしょう。

幸い、人材に関しては相当業績がよいにもかかわらず、日本で独立職に就くのを諦めて海外で独立している人が多数います。

よって、教授に相当する独立職以外の人をポスドクに降格して、ゼロベースで人事募集をかけ、テニュアトラックにすることで業績を残した人だけが残れるようにすれば劇的に日本の科学レベルは上がるでしょう。それでも長いスパンの研究ができないと文句を言う人がいるでしょうから、テニュアの期間を7年くらいに延ばせばさすがに対応出来るはずです。

このポイントは、コネ人事で非効率に選ばれている教授より下の職にちゃんと競争原理が働くようにすることと、すでに教授になっている人の立場は守ることを約束することで受け入れやすくしていることです。その中には駄目な教授もいますが、20年もしたらほぼ全て退官しますから残りはちゃんとした人ばかりになります。
それと合わせて、教授の無駄な雑用を減らすことも必要になります。