【コラム】PIになるということ

今回はいつにもまして、ゴールも主張もないままに書き始めています。

研究者のキャリアアップを簡単にまとめてみよう。日本の助教や准教授はポスドクテニュアの間くらいの仕事をしています。

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端が切れているようなので表の中身を書いておくと、
立場、学生、ポスドクテニュア、大ボス
実験、言われたことをする、自分で出来る、少しだけできる、全く出来ない
実験の目的、自分の技術を習得、さらに磨きをかける、自分の技術を発展、もはや全く経験のない技術
雑務、雑用はないが勉強が必要、雑用なし、仕事の内容が変わる・雑用多し、もはや雑用ばっかり
目標、とにかく研究に慣れる、自分の仕事を形にする、自分のスタイルを確立する、学生を育てる



大ボスの自分のスタイルはすでにオールドファッションなので拘ってはいけないが、メインの技術にしておかないと指導も出来ない。

面白いことに4つの立場全部が自分のサイエンスを追究したいという願いを持っている。
これが不幸の始まり。

学生はテーマを選べないことが多いので、自分の興味とのミスマッチからモチベーションを下げることもあるが、やっているうちにポジティブデータが出てやる気になることもあるし、一仕事まとめた後で、やりたい仕事に取りかかれることもある。その場合、立場的にはポスドクに近いので横にスライドした感じだろうか。

一番幸せなのはポスドクという立場、全力で研究だけに打ち込めます。但し、社会保障などがないに等しいという意味で一番やばい立場でもある。

実験のアイデアが一番出るのは、やはり実際に手を動かしているときであり、一番充実感を得られるのは自分で立てた計画で、自分の手で実験をして、かつ予想外の結果が得られたときだろう。テニュアポスドクから昇進したばかりで実験の勘も忘れておらず、この時点での計画は予備実験の結果も含めてかなり成功率が高い。そして、恐らく初めて自分で計画した実験を自分の手でしなくなるときでもある。この時から研究に対する見方の変化を求められてくるのだけれど、それよりも大量に提示される雑用に追われて頭の切り替えは上手く行かないヒトも多いのではないか。恐らく、アカハラや尊敬されないボスが大量に生まれているのはこの時点で、違う仕事に転職したのだというスイッチが自分の中で出来ないからだろう。

大ボスになると、色々問題を抱えながらも何とかテニュアを切り抜けた状態である。
この場合、余生を気楽に過ごしたい派、さらに学部長、総長などキャリアをアップしたい派、学会の中でのプレゼンスを上げていきたい派などに分かれてくるけれど、一番大事な本来の仕事である人を育てることに注力する人はあまりいない。あくまで自分の仕事が上手くいけば、それを手伝った部下も学生も上手くいくだろうという戦略が取られることが多い。

ポスドクからアカポスに就いた、就けたと聞くと、良かったですね、と言う人は多いけれど、本当にそれは良いことなんだろうか、それは実は転職したというのと同じ意味なのに…。

そう考えると、本当の転職組である金融日誌やニューロサイエンスとマーケティングの間のアクセスが伸びているのは興味深い。

要するに、成功している人はそのスイッチが上手くできたヒトであり、そのことがわかっているからアメリカでは30代前半で独立することが出来る(独立の平均年齢は42歳くらいらしいけれどそれでも日本よりは早い)。PIになるということは、自分で実験せずに研究をするということであり、そのための戦略は実は自分で実験する場合と全く異なるということ。そのことがわかれば、PIになることは一つの選択肢に過ぎないと気付くはずである。



うん、やっぱり、何も出てこなかったね。実は別ネタが二つあって、その前振りとしては悪くないのでそのままアップだ。