【コラム】何故ポスドク問題が解決しないのか

何故ポスドク問題が解決しないのか?
それはポスドクが優秀だからです。
それって、前のエントリーと矛盾してない?その通り。

正確にはポスドクは学術的に優秀であることを証明する博士号を持っているからです。
しかし、学術的に優秀であることと、社会的に優秀であることは全く別の問題なのですが、そのどちらも持っていない人から見たら同じようなものなのです。

よって、一般の国民の立場から見ると、
英語を読める、何か難しい科学的理論に精通している、実験計画を自分で立てて遂行出来る。もうこれだけで相当なアドバンテージに見えるわけです。だって、これらのスキルを身につけようとしたらどれだけ時間とお金がかかりますか?
実際は好きだからやっていただけなのですが、好きこそものの上手なれで、好きでない人がこれらを身につけるにはポスドクの倍以上の時間がかかるかもしれません。
よって、それだけ優秀なら国が何かしなくても職が見つかるだろう。となるわけです。

逆に、私が書いたようにポスドクは社会性のない駄目人間なんです!国がポスドク1万人計画で私たちを無理無理増やしたんだから、その後の責任も取ってください!と程度はどうあれ主張したとします。
それこそ、ププッ、ご冗談を。私なんか、高卒で英語も読めなくて科学リテラシーもないんですよ。そんな私だからこそこんな汚い職場で、きつい仕事を安い給料でやっているんです。あなたが駄目人間でも私よりは良い仕事が見つかるはずです。それよりは全くスキルが無くて仕事が見つからない仲間をまず最初に助けてください!となります。

つまり、国にとってポスドク問題は優先事項的にはどのように考えても最後の方の問題になります。今後何があっても、国が余ったポスドクの仕事先を見つけてあげます。作ってあげますなんてことは絶対にない。何故なら、民主党はもちろん、どんな政党が政権を取ってもそれは優先事項的に全く下位の問題になるからです。今、失業者および失業の危機にあるヒトの中で最も自力で仕事を見つけられる、起業するだけのスキルを持っていると目されるのがポスドクだからです。もちろん、実際にそれだけのスキルとやる気があるかは別問題ですが…


それに対して、ポスドクのヒトの身分が保障されない様子を見て、優秀なヒトが学術の世界に入ってこない。これでは日本の科学水準が下がってしまう、という意見があります。


日本の科学のレベルが低いのは優秀なヒトがいないからとか参入しないからではなくて、先に書いたように欧米のギルドとのつながりが弱いからという問題とポストに関してあまりにも政治的要因が効き過ぎているという問題があります。

また、本当にブレークスルーとなるイノベーティブな発明をする人は例えば学歴から判断出来るような優秀なヒトではなく、むしろ、そうじゃないヒトのことが多いということがあります。何故なら、論理的に避けられるようなところにセレンビリティーは眠っていることが多々あるからです。必要なのは優秀さではなくて、科学が好きという情熱だけです。

本当に優秀なら、独立する自信もありますから参入してくるだろうし、逆に優秀でなくても参入してくるのはそれこそ科学が好きという情熱だけが原動力ですから問題ないわけです。就職先、進路先が決められず、何となく入ってきた人たちが問題だという議論もありますが、じゃあ、彼らが大学院に入らずにどこに行けば良かったのか、というのは全くの別問題です。就職先がないわけだから放っておけば、彼らはニートですよ。そのニートに曲がりなりにもお金を払って貰って、科学技術の指導をするわけだから50万人以上いるといわれているニートの数を減らすことには役立っているわけです。普通のニートよりはスキルは大幅に上がっているわけですから、そこから先は彼らの問題でしょう。

実力と情熱はあるけど、運とコネが無かったからアカデミックポストをつかめないでいるヒトも多数いると思います。そういう人たちは諦め、挫折、人生の失敗といった観念が頭にこびりつくのかもしれませんが、実はそうではないんだというのがこれからの日本であり、世界です。恐らく数年先にそのことがストンと腑に落ちる時がやってくると思います。


とはいえ、できることならそんな情熱を持った人たちができるだけ研究を持続出来るような環境を作ることが望ましいです。次回はそれについて書いてみます。