【コラム】Facebookは覇権を握れない

前も書いたけど、アメリカでFacebookが流行しているのはそれが本名で登録されているからであり、アメリカ人は転職が多いからというちゃんとした理由がある。

例えば、プロバイダーが提供しているメアドは引っ越しすると、契約している会社が変わってもう使えなくなる。アメリカの賃貸住宅家賃は基本的に毎年上がるので引っ越しが多くプロバイダーのメアドは実質役立たないのだ。これは職場のメアドも一緒。転職が多いからこれも頻繁に変わる。日本みたいに年賀状や暑中見舞いの習慣がないから住所や職場、そしてメアドが変わった連絡を一括して取る手段がない。もちろん、メールで送っても良いけど、アメリカ人ってメールの件名と最初の数行しかメールは読まないからね。そんな人たちがいちいちその連絡を受けて自分の連絡先管理簿を変更するわけないし、そもそもそんなものすら作っていない。

その点FaceBookは本名で検索出来て、どこに住んでいようが、どんな仕事をしていようが連絡が取れる。だから、アメリカ人は少しでも仲良くなったらまず最初にFaceBookのアカウントを交換し合う。

つまり、FaceBookを使う理由がちゃんとあるわけだ。

一方、日本では引っ越しも転職もまれだ。もちろん、職によっては引っ越しは多いが、それは会社の命令で異動しているだけでメールアドレスは変わらない。

例えば、趣味のオフ会でもみんなハンドルネームで呼び合って、本名を知らないなんて事の方が多い。特に一回限りや最初のオフ会だとそうなるだろう。逆にそうしないと誰が誰だがわからないから。


さて、そのFaceBookが登録された友人のお好み履歴を知らせてくれるサービスを始めたと湯川さんが報告してくれている。
http://techwave.jp/archives/51447138.html

でも、残念ながらこのソーシャルが売り上げを促進するという方向にはならないだろう。

大切なのは身近な人間でのポピュラリティーではなく、全体的なポピュラリティーであり、安売り情報なんですよ。だって、現実にリアルな友達が好きだからとか、買っていたとかの理由でものを買うことはほとんどない。ファッションだとむしろ、同じ服を着ないように敬遠する理由になるくらいだ。
また、これだけ娯楽が増えると身近な友人では趣味や好みがあまりにも遠くて参考にならない。例えば、私の場合メタルだとネットでよくやく見つかった荒れ騎士さんが比較的好みが近いが、それでも80年代ハードポップに対する愛着には若干温度差がある。彼くらいレビューを挙げてくれていてようやくそれらの温度差を補正して意見を参考に出来るが、それ以外では全く当てにならないというのが実情だ。

では友人の好みが全く役に立たないかというとそうではない。例えば、iTuneは設定次第だが同じネットワークにつながっているPC/Macで友人の持っている曲を聴くことが出来るようになっている。これを利用することでアマゾンとかではちょっとしか試聴出来ない曲がフルでかつ高音質で聴くことが出来る。それらの曲は普段の自分のアンテナに決して引っかかってこない曲達であり、友人が好きでかつすぐに簡単に聞くことができるという条件が揃って初めて聞くという行為に至るものだ。結果的に意外と良い曲が見つかったりする。実際、この経験を介して買ったCDがある。打率的には50%くらいで意外と高い。これは別にその友人に興味があったから買ったのではなく、あくまで曲が良いと感じたから買ったわけだが、ジャンルもカントリーで自分の範疇ではなかった。でも、そのクオリティーはかなり高く、それを自力で探せと言われてもたぶん無理だったと思うし、それよりももっと自分の好みにあったCDがあるかもしれないが、それも探し出すのは無理だろうし、そんな気も起こらない。

そうすると、最初の話と矛盾することになる。友人が好きなものだから買うのではなく、友人の意見だから少し聞く耳を持つ。結果的に本当に良いものと思ってもらえたら買って貰えるというのが本質なんだろう。つまり、商品の質を上げない限り売り上げが上がるわけではないと言うことだし、逆に質さえ高ければ、ソーシャルは強力な宣伝ツールになるということだ。

ちなみに私が考えているソーシャルがさらに強力になる仕組みは、早く知れば知るほど安くなり、それをインセンティブにしてネットワークを作るようにしたSNSであり、そういったSNSが最後は勝つだろう。そうすると、実はカカクコムなんかはそういう世界に一気に参入する材料が揃っているんだけどね。人材も十分あるだろうし、なくても秋葉原なら周辺でいくらでもかき集められると思うけどね。