【コラム】電子コミックの今後

電子コミックが単行本と同じ値段なのはやはり本が売れなくなって取次、書店が儲からなくなるからであろう。それぞれの取り分は出版社、取次会社、書店で70, 8, 22%らしい。印税は出版社分に入っていて10%程度。

PSP storeだと一巻420円くらいで、一話50−100円、一巻に10−12話くらい入っているので一話の方が高くなる。しかも、例えばジャンプそのものと比べるとかなり割高になる。

eBook JapanとPSP storeのラインナップを比べると面白いことがわかる。
どちらも出版社から売る権利をまかせてもらうために実際の本と同価格もしくはやや高い価格という条件で取引している。

それでも、eBook Japanの方が割引をできているのは、そのラインナップのほとんどが今では本屋に置いてもらえないような古い漫画ばかりだからだ。本屋に置いていないと売れないわけだからそれならいっそネットで売ってくれというわけで、これは著者も出版社も大歓迎なわけ。

一方、PSP storeのラインナップは超強力だ。最新の売れ線の漫画が揃っている。ところが、昨年の12月から始まっているはずなのにそれらの人気漫画はなぜか第一話だけ。

恐らく、コピーの問題などはSONYの個体認証能力を信じて任せたが、値段も含めて果たしてどれくらい売れるものなのか、出版社が様子見をしているという部分もあるのだろう。

eBook JapanもPSP storeもクラウドには対応している。PSP storeは一度買えば何度でもダウンロード可能という機能を標準装備している。すると、値下げしたときに高いときに買ったお客さん、しかも、そのお客さんは今後継続できるかどうかわからないチャレンジングなビジネスに乗ってくれた大事なお客さんだ。値下げした分、お金を返すというのならありだが、いちいちそんなことをしていたらきりがない。

で、本来なら、紙代も印刷代も要らないのだからもっと安くすべきだというのが、業者やお客さんの心情である。ところが、出版社の都合でそれができない。それが未だに第一話だけのリリースで凍っている事情の一つだろう。


では、どうするか。電子出版の流れは変えられない。一部の出版社はすでに赤字だらけでつぶれかけている。そのため、どうせ倒産するくらいならと取次や書店を切って値下げに同意するというパターンが一つ。

もう一つは、電子出版社側が編集と漫画家を雇って、直接配信。問題は、一応コミックは子供のためのものなので、子供が読めない電子出版だけの出版には漫画家も乗ってこないだろうということ。コミケの人気漫画家くらいなら十分あると思うが、PSP storeはエロはやらないと決めているらしいのでそれも実は無理。

ということは、このビジネスやっぱり駄目なのか?となるが、そうでもなさそうだ。

先日、ロウパラがつぶれたのは書いた。実はロウパラ以外に人気漫画の単行本を全部載せているサイトがあったのだが、本日見事にそれらが消されていた。数カ国語の訳も載っていたため国際的な認知度を高めるというサイトとしての価値はあるので、サイトは残っているが日本語が載っているファイルは全て消されてしまったわけ。

こういう動きがあったということは、代わりとなるものを正規にリリースする段階に入ったということだろうし、恐らくそのことがサイト閉鎖に追い込むための殺し文句だったのだろう。というのも、一応、「正規に手に入る手段があるなら、そちらを買ってください」という但し書きを載せていたからね。

よって、今後の流れとして比較的理想的なのは、まず電子書籍は単行本なら50円程度安く売る。実は、印刷代や紙代の部分は70円程度らしいので、その分の値下げはそれほど期待できないのだ。それでも、書店と取次の取り分が丸ごと利益になる。電子出版社側に回るお金もあるが、出版社側の利益も少しは増えるだろう。幼児向けの本など一部電子出版に移行できない分野があるので、その部分は今まで通り続ける。しかし、それでは書店も暮らしていけないので、店内なら本を読み放題の喫茶店を新たに展開し、そこに書店や取次で働いていた人を優先的に雇うことにするのはどうだろうか。