【コラム】“孫正義 LIVE 2011”

ちきりん氏のところで紹介されていた孫正義氏の講演。

2時間弱あったが、見始めたら止まらなくなってしまった。細かい突っ込みどころはいくつかあったし、本当にそうだったのか?あとから記憶を刷り直したのではと思えるところもあったが、基本的に彼が主張したいところは誰が見ても納得がいくことだろうし、こんなに人を刺激する講演は初めて見た。それだけでも十分価値があると思う。

残念なことにビデオの方はすでに公開終了しているが、探せばどこかに落ちているかもしれない。とりあえず、ここに全文書き起こしたものがあるので内容は読めるようになっている。これも読むと1時間くらいかかるので、時間のない人はちきりん氏のメモだけでも読んだ方がよいだろう。それでも、やはりこれは本物を見た方が良いんだけど。


本当これを日本の中高生全員に見せるだけで、日本が劇的に変わりそうなくらい強烈なビデオだった。ジョブスのスタンフォードでの15分講演も有名だけど、強烈さではこちらの方が遙かに上だと思う。

とりあえず、くだらない突っ込みを含めてつらつらと感想を書いていく。

まず、不思議だったのが、あれほど優秀なのに何故授業を中心とした勉強をしているのか?ということだった。また、アメリカの授業はどちらかというと議論中心で構築されているはずなのに彼の話からは日本の予備校のような授業風景しかイメージできなかった。もちろん、大学で議論中心の授業も受けていたはずだけど、あえて日本の人にわかりやすい授業を受けるスタイルを強調したということだろうか?

最初の話から退路を断つくらいの決断を続けないと本当に大きな成功は得られないのかと勘違いしそうだがそうではない。むしろ、逆だろう。一番わかりやすいのはVodafoneの買収の大勝負だ。ネットバブルが弾ける前、会社の時価総額Vodafoneなんて余裕で買収できるほどあったはずだし、自分達で携帯会社を立ち上げるだけの資産も十分あったはずだ。であるにもかかわらず、何故そうしなかったのか?あれほど勉強して、シリコンバレーにも十分な人脈を作っていても、尚、モバイルインターネットの時代がやってくることを読み切れていなかったということだ。むしろ、そういう時代の流れに気付いて慌てて後手後手の手を無理矢理借金して打っているというのが正しい見方だろう。

それ故に、どこかの見知らぬ女の子が感謝してくれさえすればよいという話はとても嘘くさく聞こえる。孫氏といえど、所詮人間だ。その都度その都度、正しかったり間違った判断を繰り返してきただけに過ぎない。その意味では柳井社長の方が正直だろう。

とはいえ、一見破れかぶれとも思える無茶ぶりはやはり日本人のメンタリティーならではだろう。ユダヤ人や華僑にあのような判断はできない。誰かが書いていたがあの1/10でも、1/100でも良いからああいう経営者が日本から出てくるなら日本もまだまだ大丈夫だ。ソフトバンクアカデミアで15000人の次世代経営者を育てるといっていたが、恐らく日本人は半分もいないのではないだろうか。それでも、数千人は生まれるわけでそういった人達の今後の活躍が楽しみである。

それと彼は19歳の時にアジアのモバイルインターネット事業を志していたのだろうか?
全くそんなことは予想すらしていなかっただろう。つまり、あくまで事業家としての面とやむなく選択せざるを得なかった決断に大義があるかのように繕っている面があり、それでもその大義が偽りすら消し飛ばすほどの魅力を放っているというのが本質だろう。

志高くというのは、結局、究極的には利己的でなくても満足できるという日本人(だけ)のメンタリティーに合うし、あの講演の一番の価値はそこにあるんだけど、彼の本当のモチベーションはどう考えてもそこにあるとは思えないし、そんなところにあったら経営は100%失敗するだろう。それでも、あの講演はそういう風に読み間違えてこそ価値があるということである。


さて、自分自身はこれを見て何が変わったか。
自分は来年、就職時に並ぶほどの大きな決断をしないといけない。こうしたいな、でも、今まで誰もやっていないことだし、相談すればほとんどの人が無理だと思うよとかの返事が返ってくることなんだけど、それをやっぱりやるべきかなと心密かに決断しつつある。
無茶だし、本当冒険だけど。


おまけ。elm200さんの感想。