【コラム】マンハッタンの床屋

池田氏のブログでNYの床屋は10ドルという話が出ているが、たまたま今日床屋に行ったのでマンハッタンの床屋について書こう。


まず、10ドルという低料金を私はいまだに見たことがない。とはいえ、何でも安いチャイナタウンと主に低所得者が住んでいるブロンクスならあるかもしれない。そんなところに行ったのだろうか?
しかし、黒人のちりちり髪を綺麗に結うのに10ドルという値段はありえないので、あるとしたら中南米やアジア人の直毛の人をカットするだけではないだろうか。

私は今まで奥さんが日本人という日系の散髪屋に行っていた。
料金は25ドルで20%のチップがそれに加わる。
前回切って貰ったときは店員さんが20年前に日本からやってきた人で綺麗にまとめてくれるのだがその髪型はまるで光ゲンジのようであった。つまり、古い日本のテクニックのままな訳。

それに嫌気がさして職場の近くの男性カット14ドルと書かれている店に行ってみた。

最初、ヘアカット集をみせてくれとお願いすると、そんなものはないけど、言ってくれれば切るからと。
ということで、very shortとだけ説明してみた。左後ろの髪が跳ねやすいからそこは少し長めに残してくれなんて言っても果たしてそれができるかどうかわからないからね。
そして、案の定言わなくて良かったと思える切り方だった。

まず、最初からバリカンである。バリカンの先のアタッチメントを3種類くらい換えて後ろと横をどんどんバリカンだけで切りそろえていく。しかも、がつんがつん頭にぶつかるわ、耳にぶつかるわで、心の中で「痛っ、痛っ」と叫びながらも我慢して切って貰った。

次に主に前髪と頭頂部の髪を霧吹きで濡らしては切って揃えていく。

最後にパウダーをつけたブラシで髪を払って終わり。洗髪はない。

学生時代、日本で1200円カットに行っていたが、それでも洗髪とひげ剃りはあったけどね。もちろん、こんな痛い思いはしなかったし、カットもほとんどはさみを使っており、バリカンは刈り上げ部を揃えるときしか使わなかった。

嫁さんが行っている美容院も90ドル近く取る日本人美容院だが、それでもそのカットは4500円で切って貰っていた日本の美容師の足下にも及ばない出来であった。ちなみに他の美容院だと日本人の髪質は切りにくいらしくもっとひどいことになるらしい。

これらのことから総じていえるのは、カットの技術が著しく低いということである。
もちろん、サービスの質も悪い。日本だと6000円も取るような美容院は場合によってはコーヒーの一つでもでてくるが、当然そんなものはない。アメリカは基本的にお客様は神様じゃないからね。

なんでこんな風に低いサービスでもやっていけるのかというと、競争原理があまり働いていないからだ。まず、価格に関しては住む場所や客層によってすでに相場が形成されている。同じ相場の店同士では競争原理は確かに働くが、日本人のように対価を貰えないサービスは従業員も店主も受け付けないのでそのサービスには自ずと限界がある。日本人の散髪屋は無給で残業してでも自分の腕を磨こうとするがこちらは給与が出ないのにそんな苦労はしない。

そう考えると、日本の散髪代はむしろ安いといえるかもしれない。逆にアメリカのように低いカット技術で切るだけの店を出した場合、例え500円カットであってもすぐに店はつぶれるだろう。


このコラムはTB蹴られたので池田氏に嫌われたようだ。タハッ。