【コラム】研究者の生産性を上げるための大学改革 前編

先日も書いたように大学の教授というのは社会的地位が高いだけでなく、誰にも文句を言われなくかつ教室の中ではどんなに筋が通って無かろうが、自分の言うことが絶対通るとんでもな職業な訳です。
それでいて、何故か大学の経営的な仕事も総轄して見ているところがあって事務的な仕事も結構多い。事務的な仕事って、やっていると時間がどんどんつぶれるのでなんとなく仕事をした気になってしまい、本来の業務である研究、教育がおろそかになりがち。

勢いクビにならない程度に研究して、学生の指導も行き当たりばったりでいい加減になってくる人が多い。

その上、大学院生をバカみたいに増やしてしまったことに加えて、公務員削減が重なってアカデミックポストが減っているのが現在のポスドク問題。
ポスドクから見ると、なんでこんなに仕事が遅々として進まない教授やスタッフがまかり通って、それなりに仕事をしてきた自分達に職がないのかといらだつわけですが、結局、正社員が守られて、非正社員が冷遇される一般社会と同じ問題がここにもあるというわけです。

一般社会でも一度大手で職を手にしてしまうと、犯罪でもしない限りクビにはならない。結果、頑張る人は頑張るけど、適当に流し出す人が出てくる。それと一緒です。

それでも、一般社会で頑張る人がいるのはひとえに上がまだまだあるからです。係長補佐、係長、部長補佐、部長、専務、社長、会長とそのヒエラルキーはもっともっとあるでしょう。

ところが、アカデミックの世界では、助教、准教授、教授。これで終わりです。教授になったらほとんど王様状態。とくに教授になることを夢に頑張っている人は教授になった瞬間に夢が叶っていますからその後のことはどうでも良い状態になります。これも生産性が落ちるもう一つの原因です。

それに対して、アメリカのようにテニュアトラックという若手が独立しやすい仕組みを作ってくれという要望があります。日本では、助教も准教授も基本的に教授のいいなりの仕事をしていることが多いのですが、アメリカでは助教と准教授に当たる人は基本的に教授と同じ仕事をしています。つまり、仕事の内容は完全に独立しているわけです。研究が上手く行けば、徐々にステップアップできて、行かなければクビになります。そういった仕組みを作ってくれと言うわけです。実際、日本で助教の募集をかけても地方大学だとお金のあるラボでも2,3人しか応募がないのに、若手の独立職には100人くらいの応募があります。それだけ需要があるということですね。自分も最初はテニュアを増やすべきだと考えていましたが、最近考えが変わりました。(つづく)