【コラム】学者に変人が多い理由

何で教授と呼ばれる人に変な人が多いのか、そういう人が産まれる仕組みについて考えるデスよ。

教授と呼ばれる職業は凄いのですよ。何が凄いって、人に頭を下げる必要がない。
世の中のどんな社長さんでも取引先に頭を下げる機会や可能性はあるでしょう。
首相ですら頭を下げることはあります。しかし、世の中で唯一人に頭を下げなくて良い職業が教授なのです。

教授には、部下を任命する権利、どんな研究をするか決定する権利、どんな機器を買うかを決める権利などラボを運営する上で必要な権利は全て集まっています。さらに学生の研究をまとめる責任はありますが、まとめなくてもペナルティーはありません。その学生が駄目な学生だったで片付けられるわけです。

人間誰しも間違いは犯します。そういうとき、部下や学生が間違いを指摘したとします。
それで「私が間違っていた」と素直に判断を覆せる人なら良いのですが、残念ながらそんな人は稀です。幸い今のボスはわからないことは素直にわからないと言い、それに関しては部下の判断を信頼するという態度を取ってくれますが、日本でそんな態度を取る教授はほとんどいないでしょう。

一度ボスに切れられたら下の人もアホらしくなって、もう間違いは指摘しないでしょう。するとどうなるか。ボスの選択を批判する人がいなくなるわけです。どんなに間違った選択をしても誰も文句を言わなくなってくるのです。こういう裸の王様状態になってくると、自分の選択は全て正しい、自分は素晴らしい人間だと錯覚しだすのですね。その結果、自分の思い通りにならなかったらそれは相手のせいだと感じるようになるのです。それもかなり大まじめにそう感じるようになります。その結果、アカデミックハラスメントパワーハラスメントセクシャルハラスメントを起こしてもそれがハラスメントだという自覚すらできなくなります。なにせ相手が悪いんですから。

しかし、そんな教授に一勢力だけ駄目出しする集団がいます。それは学術誌の編集者です。論文を出したときに、それなりのレベルに達していないと却下します。それに対する反応性は二通りあります。一つは自分の描いたストーリーが着々と進んでいれば、それらに対しても自分は絶対正しいと信じながら負けずに仕事をしていきますし、部下に対しても厳しく当たりながら頑張ります。もう一つは自分のストーリーが破綻してしまったパターンでその場合、徐々に論文を発表するアクティビティーが落ちていきます。自己否定されているように感じるレビューなんか読みたくないですからね。

さらにこういう裸の王様状態であることを自覚しているのかどうか、余所の山のボス猿のやり方には文句を言いません。つまり、隣のラボでハラスメントが起こっていても決して口出ししません。それが自分のパラダイスを破壊する可能性を秘めていることを心の奥底で感じているからです。

臨床の教授は一応、普通の人である患者さんと接しますから多少人間性において軌道修正できますが(もちろん、出来ない人も沢山いる。)、基礎系の教授になるとひどいものです。いかに自分が無知で無力であるかを分からせるイベントに参加させたり、どういう態度を取れば、相手がどう感じるかの心理反応を教授になる前に学習させるといったことが必要なんでしょうかね。