【コラム】放射線で奇形児が増えない理由

先日、提案した説明は藤沢数希氏がグラフを作ってくれたので、そちらを参照してください。

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ただ少し実感としてやや放射線のリスクが高すぎるなぁと思ったら、有無を言わせないために一番高い見積もりで計算しているようです。



さて、ほとんどの人が放射線を浴びれば浴びるほど、奇形児が生まれる確率が上がっていったり、さらにひどい奇形になると思っているようですが、恐らくそれは誤解です。



奇形児は製品に例えると、欠陥品とか欠損品、B級品のようなイメージを持っている人が多そうですが、むしろ、イメージとしては陶器の芸術品というのが正しい理解の仕方でしょう。


分子生物学がこれだけ発達した現在においても、足が6本あるとか、ベトちゃんドクちゃんみたいな奇形マウスを作る技術は確立されていません。
正常なマウスも含めて、極々たまに片足が未発達だったり、片目がつぶれていたり、尻尾が二股になっていたりする程度です。しかも、実験に使うマウスは遺伝的背景が一緒。つまり、近親相姦を繰り返しているマウスですから本来なら奇形の生まれるリスクは相当高いはずなんです。



それと不思議なのは、あれほどはっきりと目に見える奇形なのにそれらには病名がほとんどありません。先天性なんとか欠損症とかで一括りされるだけで、その遺伝的背景を調べようという気運はあまり高くありません。




治らない病気やマイナーな病気だと予算が取れないからというのもあるでしょう。


その一方で、メジャーな病気の本当に関係あるのか無いのかよくわからない遺伝子変異は一生懸命探すのです。リスクが1.?倍しか上がらない遺伝子変異を何億円もかけて調べるのがメジャーな研究となっています。




また、そこに科学的な共通点を見出せないからかもしれません。
一人一人の病態は異なるからであり、もし、特定の遺伝子変異を見つけてしまうとそれが差別の元になる可能性があるからというのも理由の一つでしょう。




今までいろんな遺伝子欠損マウスが作られてきました。小さかったり、寿命が短かったり、太っていたり、行動に異常があったり、糖尿病だったりするマウスですが、重要な遺伝子であればあるほど、産まれてこないという表現系が多いのです。



奇形というのは、何らかの遺伝子異常だけではなく、環境の変化、例えば、胎児が発育している間の特定の時期の特定の刺激や傷害で発生している可能性が高いでしょう。それ故に病態が多様なのだと思います。


強い放射線を浴びれば、その確率が上がりますが、同時に死産になる変異が入る確率も上がるわけです。特に持続的に障害を受けていたらその確率はずっと上がるでしょう。



奇形児が生まれる確率というのはカーリングに似ています。


ゴールのセンターが奇形児、そこから奥が死産。手前が正常児です。
そして、胎児は発生段階でどんどん大きくなります。つまり、もの凄いエネルギーを使っています。エネルギーのほとんどはミトコンドリア由来です。ミトコンドリアはエネルギーを作ると同時に活性酸素も作りますから、結構なDNAダメージを受けているはずなんです。しかし、それらはDNA修復機能によってリカバリーされています。


つまり、受精後胎児が成長するというのは、まさにカーリングでセンターのゴールを狙うかのようなことが起こっているのではないでしょうか。



死産にならずに奇形児で産まれるというのは奇跡的な出来事なのです。




ミトコンドリア活性酸素放射線によるDNAダメージのどちらが大きいかは放射線の強さ次第ですが、弱ければ問題ないし、強いと今度はこのカーリング理論のようになります。しかし、チェルノブイリでも奇形児が増えなかったことから、放射線をあまり受けていない正常出産であっても、カーリングのゴールを狙うくらいのダメージはミトコンドリアによって受けているのではないでしょうか。妊娠女性の4割が流産を経験しているというデータもこれを裏付けるものです。



もちろん、妊婦は放射線を避けた方が良いことに変わりありませんが、妊娠女性の4割が流産するという事実は二つ可能性があって、放射線云々に関係ないくらいのダメージと修復を胎児が行っているのが一つ。もう一つは、放射線どころじゃない流産させるような生活因子が我々の周囲にあるということです。それが、例えば、オーガニックやマクロビ、運動、サプリメント、空気の綺麗な田舎暮らしなどで抑えることができるものならそれを率先してやるべきですが、経験的にもあまり関係なさそうです。つまり、最初の可能性の方が高いわけです。


恐らく、奇形児を防ぐ一番の方法はできるだけ若い間に出産することなのでしょう。


精子は毎日毎日新しく減数分裂で産まれていますが、卵子は最初に持ったものがどんどん減っていくだけです。つまり、非常にダメージを受けやすい状態で長期間維持されているわけなんです。


放射線を気にする女性はまず20代中盤までに出産することを優先させた方がよっぽど安心です。それは過ぎていて子供が欲しいというのなら、出来るだけ早く出産することでしょう。その意味で、女性の婚活が活性化したというのは正しい行動です。