【コラム】死ぬ直前の願い

死ぬ直前に願いが一つだけ叶うなら何を願うでしょうか?
やっぱり家族に会うことでしょう。
家族と言っても誰になるのでしょうか?親、配偶者、子供、孫、兄弟姉妹?

人によって、また、家族構成によって答えは変わってくるでしょうが、上記の5つのカテゴリーに属する人が全部いたとして、誰に一番会いたいでしょうか?


いまさらながら、やっぱり子供なんだなと最近実感しております。

親、配偶者、兄弟姉妹っていうのは、割と普遍的な存在ですよね。共に年齢を重ねていく故に互いに成長していたとしてもいつも一緒にいたからこそその変化をほとんど意識出来ていないはずです。そのため、久しぶりにあった親が老けているのに衝撃を受けるわけです。

孫もかわいいのですが、一緒に暮らしていないことが多いのでその成長ぶりはやはり飛び飛びでしか経験していません。そして、孫がかわいい理由は自分の子供に似ているからです。

では、子供は何故特別なのか?

この間も書きましたが、やはり子供の成長は親の成長の証であるからです。
自分が成長してきたこと、時が過ぎたことを一番実感出来るのは子供の成長です。
また、生物としての役割を果たしたことを実感できるということもあるでしょう。

病院で老人が心肺停止状態になった時、心臓マッサージなど蘇生術をすることがあるのですが、昔はそれはあんまりだろうと思っていました。肋骨はボキボキと折れるわけです。意識があるかどうか分かりませんが、相当な激痛を生じると思います。脳が死んでいれば、痛みも感じないから別によいのですが、持ち直したりしていたら結構つらいはずです。
何も死ぬ直前にそんな思いをさせなくてもと考えていました。

でも、親になってみて思うのは、例えどんな痛みを受けようとも死ぬ直前に子供に会えるチャンスがあるならやはりそのチャンスは掴みたいということです。

逆に言うと、子供に会えるチャンスがないなら頼むから何もしてくれるなということでしょうか。

病院では心肺蘇生をするかどうかをあらかじめ決めていたりするわけですが、そういう場合分けをしてくれるとみんなが満足出来る最後を迎えられるかもしれません。

そういうこともあって、患者さんが亡くなったときは、
あと30分だけ体は温かいです。
今のうちに手を握って、最後の思いを伝えてあげてください。

と言うようにしています。その温もりは一生忘れない温もりとなるはずだから。