【コラム】ボス(PI、上司)の資質

実は引っ越しの最後の1時間、自分だけラボに行くことに。
みんなの実験後の片付けが汚いということで、ボスが直々にチェック。
実は抜き打ち検査をした上で、今日の11時にチェックするからと通達されていた。
前日、誰かが徹底的にクリーニングしていたからありえないくらい綺麗になっていたんだけど、そこでボスが一言(汚かったときと綺麗なとき両方見ている)。

こう言うとき、アメリカでもヒステリックに怒ったりする人が結構いるんだけど、うちのボスはちょっと違う。



「2010年は十分な業績が出ている。よって、今年自分にはもう論文は必要ない。

こんなことが続くようだったら、全ての実験はストップだ。
(学生は業績が出せなくて困るけれど、それはボスも同じ)
これは嘘じゃないぞ。
息子達に聞けば、これが嘘じゃないことはわかるはずだ。

嘘だと思うなら、自分をテストしてみろ。」

と最後の言葉を2回繰り返して言った後、その場にいた人間(全員集まるようにいわれていたが、一部バケーションでいなかった。)の名前をノートに一人ずつ書いていく。

最後のは意味がないが、何かあったときにあの場にいたはずだと見せつけるぞというポーズである。しかし、実際は誰が汚したのかわからないのでやっぱりポーズに過ぎず、儀式の一つとしてパフォーマンスしたんだと思う。

普通はね。自分の業績も減って、予算も減る可能性がある。そうすると、クビにしないといけないヒトも出てくる。卒業もさせられない。でも、ここでちゃんとやっておかないと駄目だということで選んだベストなパフォーマンス。

これは我がの為じゃないんだよね。一人一人の学生のために何がベストかをシンプルに選択しての行動で、しかもいつもぶれがない。

ヒトを教育することはどういうことか、それをいつも見せつけられるのがうちのボスだ。

同じようなシチュエーションになると、100%同じ選択肢を選ぶ。ちょっと状況が変わったくらいじゃ、先の自分の選択肢を曲げたりしない。それでいて、その選択肢よりよりよい選択肢が出たときだけ変更する。但し、今回の場合、もし誰かが再びレイジーな使い方をしたら、本当に100%実験はストップさせられるだろう。

これはリスクマネージメントで選んでいる選択肢じゃないんだよね。そこが凄いところ。


よくいるのは、臨機応変なのは良いんだけど、基本指針がしっかりしていないから、ちょっとした結果の違いで、あっちがよい、こっちがよい、こっちをしろ、何でこっちをしていないんだとぶれまくるボス。

逆に自分の過去の成功体験から、絶対こうしろと一つの方針に拘り続けるタイプもいるだろう。


仕事に例えると、ルールを破って契約を取ってくる営業マンが何人かいることがわかったときに外資系の営業部長が、


「今年は十分な業績を上げることができている。

こんなことが続くようだったら、全ての営業活動はストップだ。
これは嘘じゃないぞ。
息子達に聞けば、これが嘘じゃないことはわかるはずだ。

嘘だと思うなら、自分をテストしてみろ。」

と言うようなもの。あなたはこんなボスに巡り会ったことがありますか?