【コラム】日本人は日本語を捨てるべきか、日本語に拘るべきか?

宮崎県の発見が遅れたのが原因のようにフジは放送していますが、最初の牛が見つかって確定診断が付くまでの時間は10年前とほぼ一緒で別に遅れているわけではないとのこと。
不思議なのはちょっと調べればそのことはわかるのにあのようなミスリードする番組を平気で流せるジャーナリスト精神だ。裏方もアナウンサーも含めて。

で、昨日のトップの動画はちきりん氏が「5月18日のニュースの深層上杉隆さんによる平野貞夫参議院議員のインタビューは、過去5年でみたテレビ番組の中で最もインパクトがあった。すごすぎ・・」とコメントしていたものです。

そのちきりん氏が日本が復活するために必要な10箇条を挙げていました。
http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20100506

その中でそれは違うんじゃないと思ったのが、4の移民の受け入れと5の英語教育でした。
とりあえず、英語教育の分だけ引用。

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5.外国語教育の早期化とインセンティブ強化
・小学校1年生から、英語を必須科目として導入
・中学校からは、第2外国語を必須科目として導入(中国語、韓国語、スペイン語ポルトガル語アラビア語、フランス語などからひとつ選択)
・TOEIC860点に達した段階で、それ以降の教育費はすべて無料とする
(たとえば小学校3年生で860点に達した生徒は、それ以降の教育費は公立私立を問わず高校卒業時まですべて無料)
・国立大学および公務員試験では、語学は英語と第二外国語の2科目を必須とする。
・英語とロジックとITの授業について、英語のみで(日本語を使わずに)教える

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3番目は今日昼間考えていたことだけど、同じ事書いていましたね(^^;;
でも、たぶんこれはインセンティブにならないんじゃないかな。どちらかというと、大学に進学出来ないくらいの方が良いかも。まぁ、4番目に近いですが…
http://president.jp.reuters.com/article/2010/05/17/07EDD7EC-6181-11DF-9170-10273F99CD51.php

全員に教育しても本当に英語が必要なのは5%くらいだから無駄だととかいう意見もあるわけですが、「「就職氷河期」は半永久的に続く」を読むとそうも言っていられないのかなと。

大学院の教科書でも母国語で書かれたものがある国は英語圏を除くと恐らく日本だけ。
それくらい母国語教育が発達しているわけだけど、学術でも経済でもグローバルに戦おうと思うとどうしても英語が必要になる。

本当にビジネスで使おうと思うなら、英語が使えるだけでなく、実際に英語圏で暮らすことも必要。そういう意味では恐らく5%で十分なのかもしれない。
自分の力だけで留学する人もいれば、遊学的に2年間だけ行くのでも構わない。
できるだけポテンシャルを持ったヒトにその機会を与えるということが大事なのだろう。

その意味で外国語強化のインセンティブ強化を歌うなら、大学の教官やグローバル展開を目指す一流企業はその採用条件として2年以上の留学経験を問うようにすればよい。
また、2,3年の留学援助基金の充実も大事だろう。例えそれが遊学になろうとも、一度全く価値観の異なる土地で暮らすということは必ずイノベーションの強力な元となり得る。お金をばらまくならそういう方向性が一番効果が出るような気がします。

さて、学術の方に目を向けてみると、昔は助教授、教授になるには留学経験がほぼ必須でした。これは別にそれが採用の要件となっていたわけではなくて、最新の科学が海外にしかなかったため最先端の研究が出来る人材=留学経験のある人となったからです。
ところが、最近はその留学が劇的に減っている。ポスドク問題で人があぶれているのに加えて、アカデミックポストの半分以上はコネなので、日本のビックラボに居続けた方がポストを得る機会が増えるからです。

かようにグローバルで戦うには英語が必要、そのためには留学する必要があるのに、それが減っている、その結果、グローバルで戦う力が減ってきて学術も経済もどんどん力が落ちていっている悪循環に見舞われているのが今の日本。

で、そのことを意識してか、社内の会話を全部英語にしようという楽天、日本の学会なのにポスターも口頭発表も全部英語にしている学会、ミーティングは全部英語のラボなどそれなりに努力はしているわけですが、どうしてもその場にいると違和感はぬぐえないわけですよ。もちろん、社内や学会内に外国人に沢山入ってきて貰うことを考えるとそれが正攻法であるのはわかるのですが、本当にこれで発展していくのかどうか、英語を使うことによるメリットと一番慣れた日本語でのコミュニケーションを捨てることのメリットとどちらが上なんだろうと。

それがタイトルにつながるわけです。英語によるコミュニケーションは確かに大事なんですが、所詮コミュニケーションのツールに過ぎず、一番肝心なコンセプトは言語に寄らないもののことが多いのです。単に英語だけなら韓国人や中国人、インド人の方がずっと上手いわけです。彼らの国では高等教育の教科書は英語のものしかありません。英語がずっと下手な日本人が同じ土俵に立って勝負することが果たして日本の良さを活かす方法なのかどうなのか。この辺の疑念をブレークスルーするような日本語サービスが生まれないかなと。さらに問題をややこしくしているのは英語が上達しても、中国人、韓国人、インド人より上手くなっても結局、ビジネスでも学術でもユダヤ人ネットワークやギルドには絶対勝てないという問題があります。そういったギルドとどう付き合うのかという政治的な要素も非常に重要です。

で、個人的には、最初に書いたように海外留学・研修を通して本場のギルドと付き合えるようにすること。そのためにネイティブレベルの英語を手に入れるため受験にほとんど影響を与えず、かつ最も語学学習に適した8−10歳(7−12歳)に留学、もしくは英語による授業、交換学生によるネイティブの受け入れをできるだけ促進すること。
英語なんて所詮ツールなので、本格的にビジネスに入る前に身につけられるのがベスト。そのため、採用基準に英語力、およびギルドとのつながりを確保するための留学経験を求め、さらに日本人同士のもっと強力なネットワークコミュニケーションの促進も必要でしょう。現在、ほとんどのSNSがクローズドであってもあいかわらず匿名でやり取りされています。唯一実名が使われているのがTwitterですが、商談や発表前の学術的相談などには向かない構造になっています。とはいえ、完全にクローズドにすると尻すぼみになるのは目に見えているので、オープンとクローズドを行き来出来る実名日本語ソーシャルネットワークが必要なのでしょう。