【コラム】アバターを観ずに3Dを語る、3Dの欠点

先日、コロンバスサークルにあるサムスンの展示場で3Dテレビを見てきた。
コロンバスサークルにあるビルは六本木ヒルズみたいなものらしい。六本木ヒルズをみたことないのでどの程度似ているのか不明だが。

その中にサムスンの展示場があるわけ。ちなみにソニープラザ5番街の少し下の方のビルのフロアを独占している。ディズニーストアも5番街にあったが、この間行ったらすでに閉店していた。てっきり不況のせいかと思ったが、ディズニーストアに関してそれはあり得なくどうやらタイムズスクエアに引っ越しするようだ。Garmashの絵もそのまま売り続けてくれるのだろうか。
http://www.piersidegallery.com/artists/garmash/

さて、3Dである。
眼鏡式だったのだが、ピントが合わない。まぁ、それはちゃんと眼鏡をしてきっちり像が合う場所を探せば解決するんだと思うけどそれでも3Dに未来はないなと思えたことがある。

人の目はピントが合ってない場所はあまりはっきりわからない。でも、そこに意識を持っていくとすぐにジャストフォーカスされてぼけはない。ピントが合ってない場所はぼけているのかもしれないが、そのぼけすら意識する事は難しい。それでもカメラのレンズの特性から今までの映画はピントが合っていない部分はかなりぼけて見えていた。また、そのぼけとジャストフォーカスを使いわけることで観客に見せたいところとそうでないところを恣意的に見せ分けることで撮影者の意志を伝えていた。

また、ぼけは擬似的に遠近感を演出するのに役立っていた。ところが、3Dだとそれが難しい。遠近感そのものが3Dで表現されるからである。しかし、実際の画面は平面に展開される。つまり、人の目のピントは画面にジャストフォーカスするので近くのものと遠くのものに同時にピントがあってしまうのだ。今まではこれをレンズの特性を活かしてピントをずらしていたのにそれができなくなる。また、観客の方も実際の見え方と違う見せる側の意志を汲んだ見せられ方に慣れているだけに違和感を感じることだろう。

すると、二つの選択肢が生まれる。

ひとつは普通にものを見るときと同じように観客の意志で好きなところにフォーカスを合わせられることを受け入れる作り方。ただし、その場合でも観客がみたいと思っていない場所もジャストフォーカスとなっており、今までの映像作品を見慣れているとかなり違和感を感じるはずであるし、実際の見え方とも異なるのでほとんどの作品が同じようにならない限り生理的に受け入れがたいのではないか。

もう一つは今まで通りピントをレンズによって調節する方法。実写とCGでやり方は異なっていて、実写の場合、もしレンズが二つある形式だと同期してピント調節しないといけないし、その場合同じレンズ構成でないとずれが生じる。そもそも同じレンズ構成であっても二つのレンズから等距離にあるものでない限り同じレベルのピントになることはないので焦点幅の広いレンズを使わざるを得なくなる。
CGの場合はそもそもレンズを使わないので、CG側の処理としてぼけを演出しないといけない。ところが、実際のぼけはレンズの性能に依存して連続的にぼけ方の度合いが変わっているのにCGだとそれが結構難しい。まぁ、カメラからの距離からぼけ具合を全部計算してしまえばよいのだけど、ぼけそのものが点に対する処置でなくある一定の面に対する処理にしないといけないから計算は意外と簡単ではない。

さらにCGと実写を合成している場合、その計算と実写側のレンズのぼけ特性を合わせるのは至難の業である。アバターを見ていないので何ともいえないが、前面のキャラクターが浮く感じに対してそれほど文句も出ていないことからその辺はちゃんと処理されているのかもしれない。とはいえ、その限界を考慮した上での画面作りがなされている可能性もあり、こればっかりは見てみないとわからないし、そもそもアバターだからこそできた可能性も高く広く一般作品までその技術が使えるとは思えない。

映像の美しさはその原色具合にもよるが、意外とぼけの美しさの方が大事であることはカメラの世界を見ても明らか。すると、人工的なぼけしか作れない3Dは全く新しい美の概念を打ち立てない限り2Dを越えることは無理なのではないか。