【コラム】日本の研究者の給与はこれからもっともっと下がります

少し前に話題になった国立大学助教の給料
http://d.hatena.ne.jp/mamoruk/20110122/p1

これを多いと感じる人と少ないと感じる人がいるのでしょうが、サラリーマンの平均程度ですからやっぱり少ないという見方が一般的ではないでしょうか。

アメリカだと、助教 = Assistant professorといえば、立派なPrincipal Investigatorで独立した日本の教授と同じ仕事で、その席に着くためには激烈な競争を経ないとなれません。例えば、前にいた中部の大学のあるポストには140人もの人が応募して、そのうち、Nature or Science or Cellホルダーは80人もいたそうです。そんな競争を経た人に400万ちょいではあまりにも少ないですよね。

一方、日本の場合。実際の仕事の内容は研究に関してはポスドクと同じですが、それに雑用がたっぷりおまけされています。教室によっては自分独自の研究もさせて貰えますが、ほとんどのラボでは教授のテーマを割り振られるだけです。

さらに採用も日本の助教の半分以上はコネで決まるので、別に研究者の中で特別に優秀とは限りません。(先に紹介した人は任期付きですし、コネかどうかはわかりませんが、それなりに能力を評価されて採用されていると思われます。)


さて、そんな日本の助教の給与ですが、地方の大学ほど運営費交付金で賄われていることが多いです。今のところ、現状維持が続いていますが、最近は選択と集中の名の下に実績によって上下させるようになっています。


すると、運営費交付金を下げられた大学はどうするか。
(少し古いですが、発声練習さんの所の記事>運営費交付金削減率が3%になったら破綻しそうな大学)
http://d.hatena.ne.jp/next49/20081108/p2


昇給カーブを鈍化もしくは昇給の延期・停止をします。
次に新規に雇われる人の査定を下げて、初任給を下げます。
退職金を下げられるだけ下げます。

これらの中に働いている原則は、今働いている人の給与はできるだけ下げないようにするです。但し、辞めていく人はもうその守る範囲に入っていないというわけです。
(実際の給与の決め方などはここやここで説明されています。)
http://nagisawasteoftime.dtiblog.com/blog-entry-221.html
http://blog.goo.ne.jp/la_old_september/e/89ddf36608b3e3617bee2fa1f1e584da


さらにそれでも赤字が出るようなら、次にするのは、職員が辞めたらそのポジションは一度大学が預かる形にしてしまいます。すぐに次の人を雇える場合もありますが、ポジションによっては大学に取られてしまいます。で、それがどこに割り振られるかはまさに教授同士の政治ゲーム。これは教授のポジションも同じです。


すると、何が起こるか。まず、人が辞めてしまうとそれだけ残りのスタッフの雑用が増えます。ただでさえ自分の実験ができないのにさらに出来なくなります。つまり、生産性はさらに落ちるわけです。

教授もそのことは分かっていますから、できるだけ自分の所、もしくは、学内の共同研究先などに新しいポストが割り振られるように画策します。


そのためには自分や仲の良い教授と研究フィールドが被っている業績の良い新しい教授に来て貰っては困ります。その人が元の自分の弟子などある程度言うことを聞くヒトなら積極的に応援しますが、そうでなければ、対抗馬を連れてきたりして潰しにかかります。
これが、一つの大学でみんなやっていることがバラバラになる一つの理由です。
自分の政治力が落ちるから、自分より優秀な人に来て貰っては困るのです。
その結果、大学の生産性は落ちますから、ますます運営費交付金は落ちていきます。

本来なら似たような分野の人が一カ所に固まっていた方がコラボレーションも進んで業績が上がるわけですが、それと逆の力学が働いてしまうわけです。

そんな人は当然、それ以上のポストは望めません。給与も上がる雰囲気ではない。結果、流しにかかります。最低限の仕事さえしておけば良いとなるわけです。ちょうど、雑用が増えて時間が埋まりますから尚更、自分は仕事をしている気になって本来の仕事が疎かになります。さらに生産性が落ちるというわけです。

で、最初のループに戻るわけです。

さらに極めつけは、公務員人件費2割減です。
独立法人化したとはいえ、大学は準公務員扱いですからこの例に漏れません。
民主党には出来ないことですが、次のみんなの党を軸とした政権は必ず実行するでしょう。